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デンマークの社会と教育から学ぶ
これからの社会のあり方の一つの方向性について




                   2010/1/29
本日のサマリー




       デンマークは社会的にも経済的にも世界的に豊かな小さな大国

       その成功要因である人材育成、「自律・自立」と「コミュニケーション」

       「生活のゆとり」と「高い競争力」の両立

       モノがない社会、カネを使わない社会、大量消費しない先進国

       「工業社会」から「知識社会」へのパラダイムシフト


©From Denmark        2              2010/1/29
目次




       1.デンマークでの生活で実感した日本との違い
                ・デンマークの概要
                ・具体的体験エピソード

       2.デンマークの社会と教育
           ・デンマークのヒト×モノ×カネ


       3.日本と日本企業が学ぶべきポイント
                ・「工業社会」から「知識社会」へ
                ・人材マネジメント論の観点から考察
                ・対話による共有と深化




©From Denmark                 3     2010/1/29
デンマークというと?




©From Denmark     4   2010/1/29
デンマークとはどんな国なのか?



                1.デンマークでの生活で実感した日本との違い
                     ・デンマーク概要
                     ・具体的体験エピソード




©From Denmark
小さな大国デンマーク

    デンマークはヨーロッパの小国



         デンマークの概要
           面積:   日本の1/7以下

                人口:     日本の1/22の536万人
                         (北海道566万人、兵庫県559万人と同規模)

                人口密度:   日本の1/3以下

                GDP:    日本の約1/20




      出典:総務省統計局、国際貿易投資研究所


©From Denmark                   6                  2010/1/29
小さな大国デンマーク
     デンマークの1人1時間当たりのGDPは、日本の約1.9倍。
     近年の成長も著しく、非常に効率よく働き、生産性が極めて高いことがわかる。
       デンマークの一人一時間当たりのGDP
       1990-2006,ドル                                                                         CAGR
                                                                           40               1995-2007,%

                                                                               デンマーク   デンマーク      3.87

                                                                           35 スウェーデン
                                                                                       スウェーデン       6.26


                                                                           30  ドイツ     ドイツ       3.01
                                                                              イギリス
                                                                              フィンランド
                                                                              フランス
                                                                                       イギリス             7.59
                                                                           25 アメリカ

                                                                                       フィンランド      5.52

                                                                           20
                                                                                日本
                                                                                       フランス       4.36


                                                                           15          アメリカ       4.49


                                                                                       日本        -1.27
                                                                           10
      1990               1995                2000 2002 2003   2005 2006 2007
       出典:OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics, 国際貿易投資研究所


©From Denmark                                  7                                                2010/1/29
国際競争力ランキング5位、日本は17位




©From Denmark         8    2010/1/29
小さな大国デンマーク
   世界幸福度はNO1と評されており、経済的だけでなく、社会的にも非常に豊かな国と
   いえる。国全体がうまく機能しており、学ぶことが多い成功事例の一つと考えられる。


      レスター大学調査                                          エラスムス大学調査

      1位     デンマーク                                      1位    デンマーク
      2位     スイス                                        2位    スイス
      3位     オーストリア                                     3位    オーストリア
      4位     アイスランド                                     4位    アイスランド
      5位     バハマ                                        5位    フィンランド
      6位     フィンランド

                                                        45-46位 日本
      90位 日本


      Source: 2007 Adrian G. White, University of
           Leicester                                    Source: Veenhoven, R., World Database of
                                                             Happiness, Erasmus University Rotterdam
©From Denmark                                       9                                          2010/1/29
小さな大国デンマーク
     その成功の原資は何か?
     デンマークの天然資源は日本以上に少ない、となるとやはり人的資源か・・・
       天然資源埋蔵量
       1995-2000年,100万t
                  260,772
        ウラン          361
        原 油a        3,768

      亜瀝青炭・褐炭      145,305   67,031
                               3
                               28




                             43,000


     無煙炭・瀝青炭       111,338




                             24,000   4,469
                                              1,699    816   144
                                        0
                                        8
                                      3,865      0
                                       596     1,692
                                                 6
                                                 1      7
                                                        17
                                                       785    144
                                                               0
                 アメリカ合衆国      ドイツ     ハンガリー   ノルウェー    日本    デンマーク

                出典:総務省統計局

©From Denmark                            10                          2010/1/29
小さな大国デンマーク
   デンマーク人とはどのような人たちなのか?


 <事例>
 原子力発電所に反対するだけでなく、
 解決策としての風力発電を市民で建設、結果原発ゼロ


 問題を市民自ら主体的に、対話の中で解決していく国民性


   自律・自立・主体性
   人と人とが響きあい、お互いを照らしあう




              出典:第3の教育」炭谷俊樹著,
                「福祉の国からのメッセージデンマーク人の生き方老い方」小島ブンゴート孝子著など
©From Denmark                    11                       2010/1/29
小さな大国デンマーク
   「自律・自立」、「多様性の尊重」、「双方向コミュニケーション」が、
   家庭・社会・学校で一貫している



    学校では、
    小中学校にはテストさえない、しかし大人の科学知識は世界トップクラス
    (ex.HRMクラスにて)

    家庭では、
    一般家庭の母親が対話を促進し気付きを与えるファシリテイター

    社会では、
    日常生活でも中学生が大人を論破!?
    合理的な意見であれば、大人もこどもに従う


©From Denmark         12               2010/1/29
ヨーロッパが推進している「これからの教育」
     ヨーロッパの諸国が旧来の学力観から新しい教育へ
     教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移行


OECD Desecoプロジェクト

•   教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移した
•   教師は単なる知識の伝達者ではなく、総合的に能力を育てる支援者になること
    「教える教育」から「創造的で批判的な学びを支援する教育」
•   「創造的で批判的に思考する技能」、 「学習するための能力」


•    これからの社会において大切な3つのキー・コンピテンシー
    ●Use tools interactively (e.g. language, technology)(相互作用的に道具を用いる)
    ●Interact in heterogeneous groups (異質な集団内で相互交流する)
    ●Act autonomously(自律的に行動する)

          Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著
                 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003
©From Denmark                                         13                                    2010/1/29
小さな大国デンマーク
     デンマーク社会に生活しての感想


<友人のふりかえりより>
• 普通に生活をする基盤がある。
• 街を歩いてたら、お父さんとこどもが歩いてることが多いのに驚く
• お店は土曜日は夕方に閉まる。日曜休みで家族の時間をとるシステムができている
• 食卓を囲むのがふつう。
• 生活の基盤があって、その上に仕事がある。自分たちのためにすべてがあると感じる



<補足>
• 街で働き盛りの夫婦が平日にたくさん歩いている。
• マッキンゼー社デンマーク支店でも、帰宅は5時ごろだった
• 市長の携帯番号
• 政治を身近に考えている(500万人規模の国なので知事レベルが首相、
  投票率80%以上)
©From Denmark          14             2010/1/29
小さな大国デンマーク
             デンマークの家庭教育・幼稚園


<ブログ「From Denmark」より>                                                         そして
                                                                              いろいろの選択肢があって、自分で判断し、
下記はデンマークの教育に関するお話会に出席された                                                      決定する事を人生のテ-マにしているのが、凄い。
ある50代の主婦の方の感想です。                                                              いろいろな人を認め、みんな平等なんですね。
                                                                              やり直しすることもできる、社会の仕組みとして出来てい
----------------------------------------------------------------------        る。
                                                                              本当に何が自分にあっているのかを、見つけて自分らし
共働きの国なのに対話時間が長い。                                                              く生きることが出来る。
日本は、忙しすぎる。                                                                    そして、それを認めてくれる社会がある。ということです
やはり、物が豊富になった分、対話の時間が失われた気                                                     ね。
がします。                                                                         ----------------------------------------------------------------------
私達が子供の頃、一つのテレビを家族で囲んで、家族み
んなの様子が分かったし、自然といろいろな話が耳に
入ったし、自分の事を見守ってくれている人が沢山いる                                                     <デンマークのある幼稚園では>
事を感じてました。                                                                     プログラムなし。こどもにとって重要なのはあそび 「人
                                                                              生に必要なことはすべて幼稚園の砂場で学んだ」??
デンマークは、夕方5時ごろには、家にみんな帰って来る。
そして、食事・育児も協力して、過ごすとのこと。
日本とデンマークとなら、家庭から学ぶ事は全然違うは
ずです。



     ©From Denmark                                                       15                                                        2010/1/29
どのようにその国が形成されているのか?



                2.デンマークの社会と教育
                     ・デンマークのヒト
                     ・デンマークのモノ
                     ・デンマークのカネ




©From Denmark
デンマークの社会と教育
     デンマークの社会と教育をヒト・モノ・カネで考える




• ヒト: デンマーク教育の本質は、学校×家庭×社会教育



• モノ: 大量消費社会でない。広告がない。モノがない。



• カネ: 使わない。貯めない。不安がない。




©From Denmark         17        2010/1/29
デンマークの社会と教育




 ヒト: デンマーク教育の本質は、学校×家庭×社会教育




©From Denmark
デンマークの社会と教育
     デンマークの学校教育

       デンマークの教育
                                         試験の結果で子どもたちの能力が
  詰め込み式の知育教育中心でなく体験することから                測れるものでない
  子どもたちが自分で考え、自分で責任を持ち、
  また楽しく生きるということが大前提                     •受験戦争も偏差値もない
  人が人として生きる喜びを感じることのできる教育               •小中学校にはテストもない
                                        •大人の科学知識は世界トップ
  学ぶことは楽しいということ自分で                      •受験戦争、進学率が高くなくても、
  発見することこそが最も大切なこと                      •学力レベルが高い

                                        人が人らしく生きる。子どもが子どもらしい。試験で
  一人一人の能力資質を見極め、                        プレッシャーを与えないことが自由でのびのびした
  一人一人の成長のテンポにあわせて、                     子どもたちを育んでいるのだと痛感する
  それを引き上げていくのが教師の役割と考えてい
  る
                                        学校の選択し多く進学の仕方も多種多様
  ・子どもたちが主体的に議論し民主的に
  ・あまり勝つことに執着はない

                出典:「第3の教育」炭谷俊樹著、「平らな国デンマーク/子育ての現場から」高田ケラー有子など


©From Denmark                      19                       2010/1/29
デンマークの社会と教育
     現在のデンマーク教育に多大なる影響を及ぼしたグルントヴィ

       デンマークの教育父グルントヴィ


    近代デンマークで最も重要な人物

    彼は現在もあるフォルケホイスコーレという他には類がないデンマーク独特のフリースクールを設立

    そのコンセプトは「対話することの相互作用をつうじて共同性・歴史性に目覚め
    人間の生の不可思議さ尊厳を知りみんなとともに力をあわせて生 きることに覚醒し自覚する」

    Oplysining
    それぞれの人が自分の内にあかりを灯すこと。
    そして、そしてそのあかりで互いに照らしあい、影響を受け止めあってともに成長していくこと

    生きた言葉を提唱しラテン語教育批判

    人としての大切さを重んじ誰のものでもない自分の人生を生きるための教育方針

    知識詰め込みでなく経験することから学ぶことで自分の人生を探す
                                        賛美歌に教育コンセプト・メッセージが
                                        あり、現在も非常に多く歌われ国民性
    想像力は知力に勝る
         出典:第3の教育」炭谷俊樹著など               に多大なる影響


©From Denmark               20                    2010/1/29
デンマークの社会と教育
     モンテッソーリ教育とデンマークの教育のコンセプトを比較してみる
やりたい!!と思わせる
   魅力を保つ配慮
                                    【フォルケホイスコーレの共通点】
   ・おもろそうやん
  ・きれいやなあetc                 「教師は自分の感覚を磨き、人に語りかけ、若者のいまだ固まらぬイメージ、
やりたくなるように魅せる                  生への期待を喚起する事(つまり、魅力への配慮)が重要」 グルンドヴィ



                                    集中       正常化     人格形成
衝動              自由、       作業活動
                自己選択                       ・真の安らぎ   ・人としての温かさ   自己成熟
                          反復練習             ・快い緊張からの 優しさ         自己実現
                                            開放      ・人やものに
                                           ・満ち足りた思い  対応する心




                           集中喜びを求めて
                           さらなる自発的な活動

                       【フォルケホイスコーレの共通点】    【フォルケホイスコーレの共通点】

                          クリステン・コルの考え          クリステン・コルの考え
                       ・いやいや暗記させられるより興     ・学生の覚醒に任せる→いったん目覚
                       味が覚醒したら自然と素晴らし      めると知らぬ間に自主的に進める。
                       い仕方で身に付く            自発性の尊重
©From Denmark                         21                        2010/1/29
デンマークの社会と教育
        グルントヴィと吉田松蔭の比較

                   【ホイスコーレ・グルントヴィ】                【松下村塾・吉田松陰】
      対象者            入試なし、年齢18歳以上
                     入試なし、年齢18歳以上                   身分関係なし
                                                    身分関係なし
                    民主主義の空洞化を危惧し
                     民主主義の空洞化を危惧し
    開くきっかけ         下層階級への教育が重要と考え
                   下層階級への教育が重要と考え        相違       塾生が集まり自然発生的
                                                  塾生が集まり自然発生的
                 エリートに対する農民のための教育として
                 エリートに対する農民のための教育として
                    強い祖国愛、国の将来を憂う
                    強い祖国愛、国の将来を憂う             強い祖国愛、西欧に侵略されないように
                                              強い祖国愛、西欧に侵略されないように
   人物プロファイル              学識者                      国の将来を憂う学識者
                         学識者                      国の将来を憂う学識者
                       当時のデンマークは
                       当時のデンマークは                黒船来航など西欧列強の圧力
                                                黒船来航など西欧列強の圧力
     時代背景           英独の動向に左右される弱者
                    英独の動向に左右される弱者                 徳川幕府の幕藩体制
                                                  徳川幕府の幕藩体制
                     ヨーロッパ全土の市民革命
                     ヨーロッパ全土の市民革命                   農民の一揆
                                                    農民の一揆

                詰め込み勉強、権威主義的なラテン語学校、
                詰め込み勉強、権威主義的なラテン語学校、
   既存の教育批判      聖書中心儀礼主義の既存キリスト教への批判
                聖書中心儀礼主義の既存キリスト教への批判            孟子などを読むのではなく・・・
                                                孟子などを読むのではなく・・・
                『初めに人間があり、そしてキリスト者である』
                『初めに人間があり、そしてキリスト者である』

                 試験、単位、資格なし、寮での共同生活
                 試験、単位、資格なし、寮での共同生活                 朗読でなく
                                                    朗読でなく
     教育方法          書物より生きた言葉による対話
                   書物より生きた言葉による対話               時事問題を塾内みんなで論議
                                                時事問題を塾内みんなで論議
                  討論 実習実践を通して自己発見
                  討論 実習実践を通して自己発見

                 民衆に生きる喜び、解放と自由を教えた
                 民衆に生きる喜び、解放と自由を教えた    相違     「狂」自らの死を持って日本を目覚めさせる
                                              「狂」自らの死を持って日本を目覚めさせる
      継ぐ人         クリステン・コルなどが更なる普及
                  クリステン・コルなどが更なる普及     相違      優秀な人材は幕末動乱で全員死亡
                                               優秀な人材は幕末動乱で全員死亡
                デンマークで150年前より現代でも注目される 相違
                デンマークで150年前より現代でも注目される            長州、日本全土が狂へ
                                                  長州、日本全土が狂へ
       結果
©From Denmark         フォルケホイスコーレ
                      フォルケホイスコーレ22                  明治政府・・・
                                                    明治政府・・・ 2010/1/29
参考図書


•     「世に棲む日日」 司馬遼太郎
•     「雄気堂々」 城山三郎
•     「生のための学校―デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界」 清水満
•     ラーンネットグローバルスクール
      大人のためのモンテッソーリ講座
      ナビゲーション講座
•     「第3の教育」 炭谷俊樹
•     「福祉の国からのメッセージデンマーク人の生き方老い方」小島ブンゴート孝子著など
•     「平らな国デンマーク/子育ての現場から」高田ケラー有子など
•     「お母さんのモンテッソーリ」 野村緑
•     「モンテッソーリアンと生きる」 松本静子
•     「幼児期には2度チャンスがある~復活する子供たち~」 相良敦子




    ©From Denmark            23                    2010/1/29
デンマークの社会と教育
   家庭・学校・社会の3つの教育すべてに一貫したウェイが浸透し、機能していることが
   デンマークの人育ての最大成功要因。 一方日本では・・・


                           家庭教育




        学校教育                                    社会教育
                日本でただデンマークの教育メソッドやシステムを導入しても、
©From Denmark   家庭や社会との一貫性がなくうまくいかないことが散見される。
                              24                   2010/1/29
デンマークの社会と教育
      与えられない福祉について~自律と自立~


< 「デンマークの高齢者が世界一幸せなわけ」          つまり自治がなりたっている。
 澤渡夏代ブラント著より>                   完全に自分たちで運営しているということだ。
「福祉の豊かな国」として「デンマーク人は福祉          日本ではどうだろう
サービ スの恩恵に依存した生活をしている」とい         ほとんどのこのような団体は
う印象を与えがちですが、実は「できるかぎり自分         若者や年金受給者外の人々がボランティアとして
の生活は自分で」と人に依存することを好まず・・・        働き
「自分らしい 生活」を送っています。              受給者そのサ-ビスを受け取るというのが、ほと
                                んではないだろうか。

                                デンマ-クでは個人が自立し
<高齢者のアクティビティセンタ-訪問>             自立した個人が自分たちの社会を
                                自分たちのために作り、運営していると感じる。
ところで一番興味深い点は
スタッフはいないということ。                  だからそもそも寝たきりにもならない。
500人ものメンバ-がいて、これほどまでの大き
な施設で、である。



 ©From Denmark             25                     2010/1/29
デンマークの社会と教育
     デンマークの社会教育


 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』 第77回「レジャーリゾートLalandiaと自己
責任」
■ 高田ケラー有子 :造形作家 デンマーク北シェーランド在住

(プールにて)係員の指示など全く無くても、利用できるというのは、近隣諸国から来てい
る人たちも含めて、自己責任の国であることを実感する場面でもあります。

基本的に子供には親が目を光らせる、というのが当たり前で、何か起こってもそれを施設
の責任にするようなことも少ないのだと思います。




©From Denmark         26                  2010/1/29
デンマークの社会と教育




 モノ: 大量消費社会でない。広告がない。モノがない。でも先進国・・・




©From Denmark
デンマークの社会と教育
     モノがない社会


<ブログ「From Denmark」脅迫的広告より>        買っても買っても
                                  物質的に満たされていない心理状況に追い込
常々日本の広告は脅迫的と思っている。                まれている。

ほんとうに日本の雑誌やCMなんかみていると             膨大な広告を目にすることで
ほとんどそうしないといけないように消費者を思            どれだけ満たされてない気持ちなっているか
わせるようにできており                       ゆったりとした満足した精神状態になっていない
消費をしなければならないと脅しているように思            か
う。                                デンマークに来てそれを見ない生活になり初め
                                  てわかる。
また、週刊誌の電車の吊り広告なんて                 あってもビールか映画の広告ぐらい。
金欲や性欲を本当に暴力的に駆り立てるような
内容ばかり
この過度の刺激による社会のストレスってすご
いと思う。




©From Denmark                28                   2010/1/29
デンマークの社会と教育
       モノがない社会~コペンハーゲンとブダペストを比較して~


<ブログ「From Denmark」より>              一番驚いた点だけれども、この物価やGDPにもか
両国とも観光収入が33億ドルあり(観光白書より)、全         かわらず
く同規模の収入を得ている。                      デンマークの方が広告だけでなく圧倒的にモノが
しかし、ここまで似通っているこの二つの観光都市だ           少ないということ。
が注目すべき相違点は
                                   つまり、モノにあふれてない。大量消費社会でな
    デンマーク   ハンガリー                  いということ。
●電飾 ほぼない。 |派手                      余計なものや無駄がない。
●広告 ほぼない。 |日本ほど出ないがかなり多            あれだけのGDPがありながら。
い。                                 約1/5のハンガリーの方がよっぽどモノにあふれ
                                   ている。
また、国に関して言うと
        デンマーク       ハンガリー
●GDP/1人 39,588ドル |8,379ドル !        デンマークってつくづく当たり前のものが当たり前
約4.8倍違う! 2003年資料:国際貿易研究所           にあり、
●物価 東京以上に高い|東京の半額以下                無駄がない余計なものがない。
つまり経済発展が格段に進んでいるにも関わらず、
広告がほとんどない




  ©From Denmark               29                    2010/1/29
デンマークの社会と教育
         日本でも商品数削減という兆候??


<ワールドビジネスサテライト2009年6月?日>
• 「資生堂、伊藤園、イオン商品絞る。商品数40%削減、売上より収益、消費者もイイモノを買え
  る」

<残業代もなければ生産性も低い~日本人の「労働」に未来はあるか
  “コスト削減の即効性が高い”残業削減について考える>2009年6月24日日経ビジネス
• 1980年代は、ヒット商品のライフサイクルは、全体の80%が3年以上で、1年未満は10%にも満
  たなかった。ところが、2000年代になると、1年未満が20%に増え、3年以上ヒットし続ける商品
  は二十数%にまで減っている。(『中小企業白書(2005年版)』中小企業庁)

•      新商品の開発・販売には、商品企画、研究開発、製造、販売まで広い部門のたくさんの人が
      関わる。それだけ時間と費用をかけても、市場における競争圧力が増しているため、商品の寿
      命が短くなっているのだ。利益なき繁忙は、携帯電話機から清涼飲料水まで広い業界を苦しめ
      ている。

•      グローバル企業は、大量生産大量販売の薄利多売の事業で、市場の厳しい競争に常にさら
      される中で、利益を上げ続けることが運命づけられている。利益追求の行き着く先は、正社員
      の削減、商品の短サイクル化、過剰品質・過剰サービスであり、これらの要因が正社員の長時
      間労働につながるわけだ。


    ©From Denmark           30              2010/1/29
デンマークの社会と教育
     デンマークの産業は、食品とニッチな分野での収益性の高い知的産業が多い


<エネルギー>
• 風力発電(世界シェア約50%,2002)、バイオマス

<精密機器>
• 補聴器(世界シェア約40% Oticon社2003年European company of the year受賞)

<食品>
• 甘味料(Danisco社世界シェアトップ、売上高約2700億円)
• ビール、豚肉

<製薬>
• メディコンバレー(次ページ参照)

<その他>
• 清掃(ISS社)
• 海運(MAERSK社)
• ロイヤルコペンハーゲン、ジョージジェンセン

    出典:BBT総研作成北欧レポート

©From Denmark                   31                            2010/1/29
デンマークの社会と教育
     メディコンバレー


<メディコンバレー>
  デンマークの大コペンハーゲン地域とスウェーデン南部のスコーネ地方からなる地域
  で、質の高い研究で国際競争力のあるバイオ技術集積地のひとつである。
 各分野でリーダー的存在である研究集約的な医薬品会社、Novo Nordisk,
  AstraZeneca, LEO PharmaとH.Lundbeckの存在が、この地域の応用研究を先導し、
  産学間の生物医学研究環境の発達を促進している。

  デンマークの大学と、小規模企業の共同研究の質は高く、イノベーションの観点から
  国際競争力があり、イノベーションは、今後もデンマークのバイオ産業の成功の鍵と
  なると予想されている。

  欧州委員会企業総局によるヨーロッパ諸国のイノベーション基準の比較によると、デ
  ンマークはバイオ技術のイノベーションでは、ヨーロッパではスイスに次いで 2 位であ
  る。

    出典:ジェトロ ユーロトレンド2006

©From Denmark             32                      2010/1/29
デンマークの社会と教育




 カネ: 使わない。貯めない。不安がない。




©From Denmark
デンマークの社会と教育
     カネを使わない社会


•   学校は大学まで無料(大学生にはむしろ補助金)
•   医療すべて無料

•   家電は、新商品(マイナーチェンジはほぼない感じ)まあ必要に応じて買う程度
•   テレビ見ないから古いまま

•   車は、新車となれば400万ほどはするとのこと。ちなみにベンツのミドルクラスでは
    1000万日本車高すぎて買えない。だからあまり車乗ってない。
    コペンハーゲンでは自転車が基本という印象で、交通渋滞を見たことがない。

•   貯金は、年金があるし、医療が無料だからあまりしないとのこと。

•   エンタメは、海、森、公園、スポーツ、充実した公共施設、おしゃべり、ホームパーティ


©From Denmark         34                2010/1/29
デンマークから何を学び、どのように応用していくことができるのか?



                3.日本と日本企業が学ぶべきポイント
                     ・「工業社会」から「知識社会」へ
                     ・人材マネジメントの観点から考える
                     ・共有と深化




©From Denmark
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     「工業社会」から「知識社会」へ


<教育改革で「知識社会」へ転換>                 知識社会のステイタス
2009年4月3日日経ビジネスオンライン              ところで、社会が「知識社会」へと転換した時、私た
                                 ちの価値観はどのように変化するのだろうか?
「工業社会」から「知識社会」へ
 「重工業は国を代表するイメージが強いですが、企         これについて、スウェーデンの社会システムに詳しい
業が大きくなれば工場を低賃金で勝る海外に移さざ          神野直彦教授(東京大学経済学部・大学院経済研究
るを得ません」(チャイブ教授)。転出した国で雇用、        科教授)は、「従来の工業社会が、家や車など、もの
製造し納税するのだから一昔前とは“国産”の意味も         を手に入れたいという“所有欲求”に突き動かされて
“国益”の本質も変わってきている。グローバル化の中        成り立っているのに対して、知識社会では、自らの存
で、コンパクトに最大の外貨の獲得できるのは知的・         在価値を見出したい、人とつながり、社会に貢献した
文化的産業、というわけだ。                    い、という“存在欲求”がモチベーションになります」と
                                 言う。
 「これからの時代を担う知的産業の基礎となるのが、
人が生涯を通して必要に応じて学び続けることを推          「スウェーデンの地方自治のあり方は、ヨーロッパの
進する生涯学習社会なのです」(同)。               自治憲章(1985年)想起の参考にされているほど優
                                 れています。
 大量生産・大量消費、工場設備や低賃金労働に
よって支えられてきた「工業社会」から、資源の持続          知識社会の根本になるのはいわゆる学校教育だけ
可能性を基本とした生産・消費、知的労働よって支え         でなく、社会に出た後でも必要に応じて学び足したり、
る「知識社会」へ向けて、スウェーデン、北欧、そして        職業的に新たな技術や知識を得るための成人教育
EUは大きく舵を取っている。                   で す。その礎になるのが、生涯にわたって教育や医
                                 療や福祉といった公的サービスを行う地方自治と財
                                 政のシステムなのです」(神野教授)。


©From Denmark               36                        2010/1/29
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     「大量消費が豊かな経済社会」というのは虚妄?幻想!?



①モノがない
 種類がない
  →R&D費がいらない
   生産性が高い→無駄な労働をせず、必要なことをする→忙しくなく稼げる

②カネを使わない
 貯金しない、保険ない、不安がない(心理経済学?)

③ヒト
 「工業」社会の生産者から「知識」社会の知識創造の主体者に
  →ゆとりが育むデンマークの国民性
  →創造的活動の源泉は内発的動機(Self Determination Theory, E.L.Deci)
  →内発的動機の創出には、自律につながる「選択の機会」が増えることが重要


©From Denmark               37                      2010/1/29
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     人材マネジメント論の観点から考察



 <はじめに>
 新自由主義の浸透、ボーダレスワールドの加速、その流れに「ひと」も「社会」も多大な
影響を受け、それによる歪が出てきているのも否めない。その激動の世界の中で、デン
マークは世界幸福度No1であり、1人のあたりのGDPも高く、社会的にも経済的にも豊かと
いうことがいえるであろう。

 その成功の要因であるその教育。そのデンマーク教育についてHRM理論の観点から科
学的に洞察していきたい。人の4つの能力やコンピテンシーレベルといった理論からデン
マーク教育を考察することで、その独自のエクセレンスは何なのか?そこから学ぶべき最
も重要ポイントは何なのかを考えていきたい。




©From Denmark           38             2010/1/29
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     下記の4つの能力のうち、デンマークの教育現場で重要視されているのはどれだろうか?
     日本人に比べ、デンマーク人が優れていると思われるのはどの能力であろうか?

<人の4つの能力(「ヒューマンリソースマネジメント」高橋俊介著)>

  スキル:   多くは何歳からでも習得可能、テストで把握、陳腐化のスピードも速い、知識や専門性は今何
  が持っているか、何が出来るか以上に、短期間に新しいものを学べるかが重要、ある程度は必要だが、
  What構築能力がないと・・・

  頭のよさ: いわゆる優秀さと表現されることが多い、最も変化しにくい能力と考えられており人物評価の
  固定化につながっている、思考力試験のようなものである程度把握可能、最低限必要なレベルがあるが頭
  がよければ成果が出るというものではない、いくら頭がよくてもWhat構築能力がないと

  行動特性思考特性:    What構築能力はその典型、リーダーシップと呼ばれる能力もこの分野に属する
  ものが多い、若いうちは環境により変化しやすいが年齢とともに固定化しやすい、勉強や練習というよりア
  ウトプット、実践を通じて強化される、安定した高い成果に最も相関が高い、成果でなくプロセスで把握、コ
  ンピタンシーという概念の中核能力

  動機: その人の内側からドライブする要因、そのときの外部条件により、やる気は都度変化するが、内的
  ドライブは安定的、少年期を通じて形成され、以後そのパターンは大きくは変わりにくいとされている、感謝
  欲、影響欲、支配欲、理解共感欲、賞賛欲、社交欲、好印象欲、



©From Denmark             39                   2010/1/29
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     コンピテンシーレベルで日本とデンマークの人材像を比較するとどうであろうか?


<コンピテンシーレベル(「会社を変える社員はどこにいる?」川上真史著)>

  レベル1:言われたことしかしない。

  レベル2:与えられた役割は遂行できるレベル

  レベル3:複数のやり方の中から、最良の判断を行い実行できる。
       既存の変革は実行できるレベル。

  レベル4:独自の工夫を加えた行動を取り、そのなかで状況を変えていく。
       新しい対象領域を創造できるレベル

  レベル5:今ある状況とは別の新しい状況を独自につくってしまう。
       新しいビジネスモデルを創造できるレベル

©From Denmark           40             2010/1/29
さらなる探究へ




• ヒトに関してはどうなのか?
     なぜ自立型人材が求められているのに育たないのか?


• モノに関してはどうなのか?
     流通の仕組みや市場運営はどうなっているのか?


• カネに関してはどうなのか?
    マクロ経済や国家行政の見地からは?



©From Denmark   41              2010/1/29
日本と日本企業が学ぶべきポイント
     日本と日本企業が学ぶべきポイント



<共有&深化>
1. 隣の人と気になった点などを話し合いましょう。

2. 対話の相手を交換し、これまで話したことを共有してさらに話を進めてください。

3. 3回繰り返します。

4. 最後に全体でシェアリングをしたいと思います。




©From Denmark           42             2010/1/29
その他参考資料




©From Denmark
その他参考資料
        デンマークの社会とは何であったか


<ブログ「From Denmark」より>                         自分で自分をコントロールする「自律」が
前回、デンマークの教育の成功の本質は                            心の内側から湧き出るやる気「内発的モチベーション」につながり
一貫したウェイがあることとかいた。                             それが「よりよい活動」をうみ、「幸福度」の増進につながる。

では、どのようなウェイなのか?                               その「自律」をどう育成されるのかということはあまり知られていない。
一つ間違いなくいえることは                                 これだけ注目されている「自律」であるが、
デンマークが「自律」を促進している社会だということだろう。                 「自律はどうすれば育つか?」といわれて
                                              その本質を答えられる人はどれだけいるだろうか。
つまり、
デンマークでは、学校・社会・家庭の3つが一貫して                      ちなみに少なくとも「規律・管理統制・命令」で「自律」が育つわけは
「自律」を促進する環境になっているということ。                       なく、
                                              それらは対極にあるものである。
その「自律」の重要性は、                                  しかし「自律してほしい」といいながら、管理・命令ばかりしている人
OECDのDeSeCo Projectのキーコンピテンシーにも上げられている        は、
通り                                            誰の周りにもいるのではないだろうか。
ビジネス界においてもその重要性は広く認識されており
目指すべき人材像に「自律」を掲げている会社も少なくない。
                                              「自律」を育てるデンマーク社会。
                                              どうやってデンマーク社会の幸福度世界NO1になったのか、
エドワード・L・デシなどによると                              その最も本質的で重要なことを下記の本が説明してくれている。
「自律」は「内発的動機」に必要なものであり、
そして、その「内発的動機」は「創造」や「問題解決」をもたらし、
その結果「幸福感」にいたることがわかっている。                       この「人を伸ばす力 内発と自律のすすめ」は
                                              何度読んでも新しい発見がある。
「創造」や「幸福感(従業員満足)」などと                          なぜこの本があらゆる方面で活用されないのか理解できないほど、
多くの組織で課題となっているものの根幹にこの「自律」がある。                「ヒト」や「学び」の考え方の正真正銘の本質がかかれている。
                                              はっきりおすすめと自信を持っていえる名著



   ©From Denmark                         44                          2010/1/29
ヨーロッパが推進している「これからの教育」
      ヨーロッパの諸国が旧来の学力観から新しい教育へ
      教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移行
                    Desecoのとらえたキーコンピテンシーの枠組み
社
会                                                                                う
の      ・人権                           異質集団の中で                                     ま
ビ      ・持続可能性                         相互交流する                                     く
ジ      ・平等                                 Interact in                           い
ョ      ・生産性                              heterogeneous
                                                                                 く
ン                                                                                生
                                             groups                              活

キーコンピテンシーの
                                              省察                                 よ
  理論的要素                                                                          く
                                         Reflectiveness
                                                                                 機
生                                                                                能
活      ・テクノロジー                                            相互交流的に                 す
                            自律的に
の      ・多様性                                               道具を使用する                る
                            行動する
要      ・流動性                                                  Use tools           社
請                       Act autonomously                                         会
       ・責任                                                interactively
       ・グローバル化

    ©From Denmark                   45                                    2010/1/29
ヨーロッパが推進している「これからの教育」
     Reflectiveness:省察
     キーコンピテンシーをつなぎとめる決定的な能力

•   自己の思考や行動を吟味するというメタ認知能力の意味合い:自身を客体とするよう
    な思考過程の主体となること

•   思考について思考すること

•   創造的能力や批判的姿勢をとること

•   二者択一を超えて、即断ではなく粘り強く考える、熟考する

•   違いや対立を扱う能力




          Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著
                 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003

©From Denmark                                                          46                   2010/1/29
ヨーロッパが推進している「これからの教育」
     PISA2006問題例(科学リテラシー)


                                 •   太郎さんが、地球の平均気温と二酸化
                                     炭素排出量との間にどのような関係が
                                     あるのか興味をもち、図書館で次のよう
                                     な二つのグラフを見つけました。




                                •太郎さんは、この二つのグラフから、地球の平均
                                気温が上昇したのは二酸化炭素排出量が増加し
                                たためであるという結論を出しました。




©From Denmark                47
                      Source:文部科学省サイト            2010/1/29
ヨーロッパが推進している「これからの教育」
     PISA2006問題例(科学リテラシー)


温室効果に関する問1
太郎さんの結論は、グラフのどのようなことを根拠にしていますか。

温室効果に関する問2
花子さんという別の生徒は、太郎さんの結論に反対しています。花子さんは、二つのグラ
  フを比べて、グラフの一部に太郎さんの結論に反する部分があると言っています。
グラフの中で太郎さんの結論に反する部分を一つ示し、それについて説明してください。

温室効果に関する問3
太郎さんは、地球の平均気温が上昇したのは二酸化炭素排出量が増加したためである
  という結論を主張しています。しかし花子さんは、太郎さんの言うような結論を出すの
  はまだ早すぎると考えています。花子さんは、「この結論を受け入れる前に、温室効
  果に影響を及ぼす可能性のある他の要因が一定であることを確かめなければならな
  い」と言っています。
花子さんが言おうとした要因を一つあげてください。


©From Denmark                48
                      Source:文部科学省サイト   2010/1/29
社会に出て生きていく基本的な必要条件
     「リテラシー」

•   情報を入手し、管理し、統合し、創造し、判断する能力
    分析し、比較し、対照し、価値を測る能力
•   知識を受け入れ、知識を生み出す 知識と情報とを創造的に運用する能力 創造的
    に考え、新しい知識を生み出し、仮定し、発見する方法 まだ馴染みのない新しい状
    況に対し、知識と経験を適応する能力
•   変化に適用する能力
•   傾向を認識し、共通点を確立し、経験した状況と将来であうかもしれない新しい状況
    との関係を打ち立てる
•   変化に対応し、現代生活の非常に重要である曖昧性・複雑性との折り合いをつける




          Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著
                 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003

©From Denmark                                                          49                   2010/1/29
コンピテンシーの内的構造




                                                                             コンピテンシーの内的構造
                                                                         Knowledge 知識
                                                                         Cognitive skills 認知技能
                                                             協           Practical skills 実践技能
                                                             同           Attitude 態度
要請に基づくコンピテンシー                                                と           Emotions 情緒
  例)協同する能力                                                   関           Values and ethics 価値と論理
                                                             連
                                                                         Motivations 動機
                                                             す
                                                             る




           Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著
                  Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003

 ©From Denmark                                                          50                         2010/1/29
その他参考資料
     デンマークは日本の1/7以下の面積しかない小国
     人口密度も日本の1/3以下
       デンマークの国土
       2001年,k㎡,人/k㎡

       国土面積                                                                                 人口密度
        9,629,091
                                                                                      アメリ     2,958
                                                                                      カ


                                                                                      フラン             10,733
                                                                                      ス


                                                                                      スウェーデ   1,978
                                                                                      ン


                                                                                      ドイツ                       23,066
                     551,500

                                449,964
                                                                                      日本                                 38,826
                                          357,022
                                                    327,844
                                                                   242,900
                                                                                      イギリ                       24,603
                                                                                      ス

                                                                             43,094
                                                                                      デンマーク            12,438
         アメリ         フラン       スウェーデ       ドイツ       日本            イギリ       デンマーク
         カ           ス         ン                                   ス
                    出典:総務省統計局



©From Denmark                                                 51                                                         2010/1/29
その他参考資料
     デンマークは536万人の小国。(北海道566万人、兵庫県559万人と同規模)
     増加もほぼ横ばい。
       デンマークの人口
       1950-2001,万人,%                                             CAGR
                                                30000
                                                  アメリ       アメリ                             1.16
                                                   カ        カ
                                                25000
                                                            日本                       0.83


                                                20000
                                                            イギリ          0.36
                                                            ス


                                                15000       フラン                   0.68
                                                            ス
                                                 日本

                                                10000       ドイツ          0.37

                                                 ドイツ

                                                  イギリ       スウェーデ          0.47
                                                5000ス
                                                  フラン       ン
                                                    ス
                                                    スウェーデ   デンマーク         0.45
                                                  0   ン
                                                    デンマーク
      1950              1975   1995        20002001

                出典:総務省統計局



©From Denmark                         52                                                     2010/1/29
その他参考資料
     デンマークのGDPは日本の1/20と規模は小さい、また、日本はマイナス成長の中プ
     ラス成長
        デンマークのGDP
        1980-2003,100万ドル                                                  CAGR
                                                                          1995-
                                                           アメリ
                                                             カ            2003,%
                                                         10000000   世界                      2.62



                                                                    アメリ                            5.09
                                                         8000000    カ


                                                                    日本    -2.56

                                                         6000000
                                                                    ドイツ           -0.37


                                                           日本
                                                         4000000    イギリ                             5.88
                                                                    ス

                                                          ドイツ       フラン                   1.5
                                                         2000000    ス
                                                           フラン
                                                            ス
                                                          イギリ
                                                            ス       デンマーク                  2.06

                                                          0 デンマーク
      1980      1985       1990   1995   2000   2002   2003
                 出典:国際貿易投資研究所



©From Denmark                                    53                                                   2010/1/29
その他参考資料
     しかしながら一人当たりのGDPをみるとデンマークは世界4位
     日本の1.2倍もある。
        デンマークの一人当たりのGDP
        1980-2003,ドル                                                    CAGR
                                                     60000              1995-
                                                       1ルクセンブルク         2003,%
                                                                    1ルクセンブルク                   3.51


                                                     50000          2ノルウェイ                        4.63
                                                       2ノルウェイ
                                                                    4デンマーク               1.74

                                                      4デンマーク        6アメリ                        3.97
                                                     40000
                                                                    カ
                                                        6アメリ
                                                                    8スウェーデン               2.38
                                                          カ
                                                      8スウェーデン
                                                       9日本
                                                         13フィンランド   9日本 -2.77
                                                     30000
                                                         14イギリス
                                                       15フランス
                                                      17ドイツ         13フィンランド               2.55

                                                                    14イギリス                            5.53
                                                     20000

                                                                    15フランス              1.07

                                                                    17ドイツ       -0.49
                                                     10000

      1980      1985   1990   1995   2000   2002   2003
                 出典:国際貿易投資研究所



©From Denmark                                54                                                        2010/1/29
その他参考資料
     労働時間は日本は多い、比べてデンマークは少ない。



       各国の労働時間
       1990-2007,hours
                                                                                                                                                                                                                                                               2300


                                                                                                                                                                                                                                                               2200


                                                                                                                                                                                                                                                               2100


                                                                                                                                                                                                                                                               2000


                                                                                                                                                                                                                                                               1900


                                                                                                                                                                                                                                                               1800 日本
                                                                                                                                                                                                                                                                    アメリ
                                                                                                                                                                                                                                                                     カ
                                                                                                                                                                                                                                                               1700
                                                                                                                                                                                                                                                                 イギリス

                                                                                                                                                                                                                                                               1600
                                                                                                                                                                                                                                                                 デンマーク
                                                                                                                                                                                                                                                                 スウェーデン
                                                                                                                                                                                                                                                                  フランス
                                                                                                                                                                                                                                                               1500

                                                                                                                                                                                                                                                                   ドイツ
       1970
              1971
                     1972
                            1973
                                   1974
                                          1975
                                                 1977
                                                        1978
                                                               1979
                                                                      1980
                                                                             1981
                                                                                    1982
                                                                                           1983
                                                                                                  1984
                                                                                                         1985
                                                                                                                1987
                                                                                                                       1988
                                                                                                                              1989
                                                                                                                                     1990
                                                                                                                                            1991
                                                                                                                                                   1992
                                                                                                                                                          1993
                                                                                                                                                                 1994
                                                                                                                                                                        1995
                                                                                                                                                                               1996
                                                                                                                                                                                      1997
                                                                                                                                                                                             1998
                                                                                                                                                                                                    1999
                                                                                                                                                                                                           2000
                                                                                                                                                                                                                  2001
                                                                                                                                                                                                                         2002
                                                                                                                                                                                                                                2003
                                                                                                                                                                                                                                       2004
                                                                                                                                                                                                                                              2005
                                                                                                                                                                                                                                                     2006
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                                                                 出典:OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics


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©From Denmark                                                                                                                                 55                                                                                                                          2010/1/29
追調査事項


•   <追調査事項>
    ●自殺率は、デンマークより日本の方がかなり高いようです。
    http://www.who.int/mental_health/prevention/suicide_rates/en/index.html

    ●年金額について下記をご参照ください。
    http://www.jmm.co.jp/dynamic/report/report2_197.html




©From Denmark                           56                                2010/1/29

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Denmark

  • 2. 本日のサマリー デンマークは社会的にも経済的にも世界的に豊かな小さな大国 その成功要因である人材育成、「自律・自立」と「コミュニケーション」 「生活のゆとり」と「高い競争力」の両立 モノがない社会、カネを使わない社会、大量消費しない先進国 「工業社会」から「知識社会」へのパラダイムシフト ©From Denmark 2 2010/1/29
  • 3. 目次 1.デンマークでの生活で実感した日本との違い ・デンマークの概要 ・具体的体験エピソード 2.デンマークの社会と教育 ・デンマークのヒト×モノ×カネ 3.日本と日本企業が学ぶべきポイント ・「工業社会」から「知識社会」へ ・人材マネジメント論の観点から考察 ・対話による共有と深化 ©From Denmark 3 2010/1/29
  • 5. デンマークとはどんな国なのか? 1.デンマークでの生活で実感した日本との違い ・デンマーク概要 ・具体的体験エピソード ©From Denmark
  • 6. 小さな大国デンマーク デンマークはヨーロッパの小国 デンマークの概要 面積: 日本の1/7以下 人口: 日本の1/22の536万人 (北海道566万人、兵庫県559万人と同規模) 人口密度: 日本の1/3以下 GDP: 日本の約1/20 出典:総務省統計局、国際貿易投資研究所 ©From Denmark 6 2010/1/29
  • 7. 小さな大国デンマーク デンマークの1人1時間当たりのGDPは、日本の約1.9倍。 近年の成長も著しく、非常に効率よく働き、生産性が極めて高いことがわかる。 デンマークの一人一時間当たりのGDP 1990-2006,ドル CAGR 40 1995-2007,% デンマーク デンマーク 3.87 35 スウェーデン スウェーデン 6.26 30 ドイツ ドイツ 3.01 イギリス フィンランド フランス イギリス 7.59 25 アメリカ フィンランド 5.52 20 日本 フランス 4.36 15 アメリカ 4.49 日本 -1.27 10 1990 1995 2000 2002 2003 2005 2006 2007 出典:OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics, 国際貿易投資研究所 ©From Denmark 7 2010/1/29
  • 9. 小さな大国デンマーク 世界幸福度はNO1と評されており、経済的だけでなく、社会的にも非常に豊かな国と いえる。国全体がうまく機能しており、学ぶことが多い成功事例の一つと考えられる。 レスター大学調査 エラスムス大学調査 1位 デンマーク 1位 デンマーク 2位 スイス 2位 スイス 3位 オーストリア 3位 オーストリア 4位 アイスランド 4位 アイスランド 5位 バハマ 5位 フィンランド 6位 フィンランド 45-46位 日本 90位 日本 Source: 2007 Adrian G. White, University of Leicester Source: Veenhoven, R., World Database of Happiness, Erasmus University Rotterdam ©From Denmark 9 2010/1/29
  • 10. 小さな大国デンマーク その成功の原資は何か? デンマークの天然資源は日本以上に少ない、となるとやはり人的資源か・・・ 天然資源埋蔵量 1995-2000年,100万t 260,772 ウラン 361 原 油a 3,768 亜瀝青炭・褐炭 145,305 67,031 3 28 43,000 無煙炭・瀝青炭 111,338 24,000 4,469 1,699 816 144 0 8 3,865 0 596 1,692 6 1 7 17 785 144 0 アメリカ合衆国 ドイツ ハンガリー ノルウェー 日本 デンマーク 出典:総務省統計局 ©From Denmark 10 2010/1/29
  • 11. 小さな大国デンマーク デンマーク人とはどのような人たちなのか? <事例> 原子力発電所に反対するだけでなく、 解決策としての風力発電を市民で建設、結果原発ゼロ 問題を市民自ら主体的に、対話の中で解決していく国民性 自律・自立・主体性 人と人とが響きあい、お互いを照らしあう 出典:第3の教育」炭谷俊樹著, 「福祉の国からのメッセージデンマーク人の生き方老い方」小島ブンゴート孝子著など ©From Denmark 11 2010/1/29
  • 12. 小さな大国デンマーク 「自律・自立」、「多様性の尊重」、「双方向コミュニケーション」が、 家庭・社会・学校で一貫している 学校では、 小中学校にはテストさえない、しかし大人の科学知識は世界トップクラス (ex.HRMクラスにて) 家庭では、 一般家庭の母親が対話を促進し気付きを与えるファシリテイター 社会では、 日常生活でも中学生が大人を論破!? 合理的な意見であれば、大人もこどもに従う ©From Denmark 12 2010/1/29
  • 13. ヨーロッパが推進している「これからの教育」 ヨーロッパの諸国が旧来の学力観から新しい教育へ 教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移行 OECD Desecoプロジェクト • 教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移した • 教師は単なる知識の伝達者ではなく、総合的に能力を育てる支援者になること 「教える教育」から「創造的で批判的な学びを支援する教育」 • 「創造的で批判的に思考する技能」、 「学習するための能力」 • これからの社会において大切な3つのキー・コンピテンシー ●Use tools interactively (e.g. language, technology)(相互作用的に道具を用いる) ●Interact in heterogeneous groups (異質な集団内で相互交流する) ●Act autonomously(自律的に行動する) Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003 ©From Denmark 13 2010/1/29
  • 14. 小さな大国デンマーク デンマーク社会に生活しての感想 <友人のふりかえりより> • 普通に生活をする基盤がある。 • 街を歩いてたら、お父さんとこどもが歩いてることが多いのに驚く • お店は土曜日は夕方に閉まる。日曜休みで家族の時間をとるシステムができている • 食卓を囲むのがふつう。 • 生活の基盤があって、その上に仕事がある。自分たちのためにすべてがあると感じる <補足> • 街で働き盛りの夫婦が平日にたくさん歩いている。 • マッキンゼー社デンマーク支店でも、帰宅は5時ごろだった • 市長の携帯番号 • 政治を身近に考えている(500万人規模の国なので知事レベルが首相、 投票率80%以上) ©From Denmark 14 2010/1/29
  • 15. 小さな大国デンマーク デンマークの家庭教育・幼稚園 <ブログ「From Denmark」より> そして いろいろの選択肢があって、自分で判断し、 下記はデンマークの教育に関するお話会に出席された 決定する事を人生のテ-マにしているのが、凄い。 ある50代の主婦の方の感想です。 いろいろな人を認め、みんな平等なんですね。 やり直しすることもできる、社会の仕組みとして出来てい ---------------------------------------------------------------------- る。 本当に何が自分にあっているのかを、見つけて自分らし 共働きの国なのに対話時間が長い。 く生きることが出来る。 日本は、忙しすぎる。 そして、それを認めてくれる社会がある。ということです やはり、物が豊富になった分、対話の時間が失われた気 ね。 がします。 ---------------------------------------------------------------------- 私達が子供の頃、一つのテレビを家族で囲んで、家族み んなの様子が分かったし、自然といろいろな話が耳に 入ったし、自分の事を見守ってくれている人が沢山いる <デンマークのある幼稚園では> 事を感じてました。 プログラムなし。こどもにとって重要なのはあそび 「人 生に必要なことはすべて幼稚園の砂場で学んだ」?? デンマークは、夕方5時ごろには、家にみんな帰って来る。 そして、食事・育児も協力して、過ごすとのこと。 日本とデンマークとなら、家庭から学ぶ事は全然違うは ずです。 ©From Denmark 15 2010/1/29
  • 16. どのようにその国が形成されているのか? 2.デンマークの社会と教育 ・デンマークのヒト ・デンマークのモノ ・デンマークのカネ ©From Denmark
  • 17. デンマークの社会と教育 デンマークの社会と教育をヒト・モノ・カネで考える • ヒト: デンマーク教育の本質は、学校×家庭×社会教育 • モノ: 大量消費社会でない。広告がない。モノがない。 • カネ: 使わない。貯めない。不安がない。 ©From Denmark 17 2010/1/29
  • 19. デンマークの社会と教育 デンマークの学校教育 デンマークの教育 試験の結果で子どもたちの能力が 詰め込み式の知育教育中心でなく体験することから 測れるものでない 子どもたちが自分で考え、自分で責任を持ち、 また楽しく生きるということが大前提 •受験戦争も偏差値もない 人が人として生きる喜びを感じることのできる教育 •小中学校にはテストもない •大人の科学知識は世界トップ 学ぶことは楽しいということ自分で •受験戦争、進学率が高くなくても、 発見することこそが最も大切なこと •学力レベルが高い 人が人らしく生きる。子どもが子どもらしい。試験で 一人一人の能力資質を見極め、 プレッシャーを与えないことが自由でのびのびした 一人一人の成長のテンポにあわせて、 子どもたちを育んでいるのだと痛感する それを引き上げていくのが教師の役割と考えてい る 学校の選択し多く進学の仕方も多種多様 ・子どもたちが主体的に議論し民主的に ・あまり勝つことに執着はない 出典:「第3の教育」炭谷俊樹著、「平らな国デンマーク/子育ての現場から」高田ケラー有子など ©From Denmark 19 2010/1/29
  • 20. デンマークの社会と教育 現在のデンマーク教育に多大なる影響を及ぼしたグルントヴィ デンマークの教育父グルントヴィ 近代デンマークで最も重要な人物 彼は現在もあるフォルケホイスコーレという他には類がないデンマーク独特のフリースクールを設立 そのコンセプトは「対話することの相互作用をつうじて共同性・歴史性に目覚め 人間の生の不可思議さ尊厳を知りみんなとともに力をあわせて生 きることに覚醒し自覚する」 Oplysining それぞれの人が自分の内にあかりを灯すこと。 そして、そしてそのあかりで互いに照らしあい、影響を受け止めあってともに成長していくこと 生きた言葉を提唱しラテン語教育批判 人としての大切さを重んじ誰のものでもない自分の人生を生きるための教育方針 知識詰め込みでなく経験することから学ぶことで自分の人生を探す 賛美歌に教育コンセプト・メッセージが あり、現在も非常に多く歌われ国民性 想像力は知力に勝る 出典:第3の教育」炭谷俊樹著など に多大なる影響 ©From Denmark 20 2010/1/29
  • 21. デンマークの社会と教育 モンテッソーリ教育とデンマークの教育のコンセプトを比較してみる やりたい!!と思わせる 魅力を保つ配慮 【フォルケホイスコーレの共通点】 ・おもろそうやん ・きれいやなあetc 「教師は自分の感覚を磨き、人に語りかけ、若者のいまだ固まらぬイメージ、 やりたくなるように魅せる 生への期待を喚起する事(つまり、魅力への配慮)が重要」 グルンドヴィ 集中 正常化 人格形成 衝動 自由、 作業活動 自己選択 ・真の安らぎ ・人としての温かさ 自己成熟 反復練習 ・快い緊張からの 優しさ 自己実現 開放 ・人やものに ・満ち足りた思い 対応する心 集中喜びを求めて さらなる自発的な活動 【フォルケホイスコーレの共通点】 【フォルケホイスコーレの共通点】 クリステン・コルの考え クリステン・コルの考え ・いやいや暗記させられるより興 ・学生の覚醒に任せる→いったん目覚 味が覚醒したら自然と素晴らし めると知らぬ間に自主的に進める。 い仕方で身に付く 自発性の尊重 ©From Denmark 21 2010/1/29
  • 22. デンマークの社会と教育 グルントヴィと吉田松蔭の比較 【ホイスコーレ・グルントヴィ】 【松下村塾・吉田松陰】 対象者 入試なし、年齢18歳以上 入試なし、年齢18歳以上 身分関係なし 身分関係なし 民主主義の空洞化を危惧し 民主主義の空洞化を危惧し 開くきっかけ 下層階級への教育が重要と考え 下層階級への教育が重要と考え 相違 塾生が集まり自然発生的 塾生が集まり自然発生的 エリートに対する農民のための教育として エリートに対する農民のための教育として 強い祖国愛、国の将来を憂う 強い祖国愛、国の将来を憂う 強い祖国愛、西欧に侵略されないように 強い祖国愛、西欧に侵略されないように 人物プロファイル 学識者 国の将来を憂う学識者 学識者 国の将来を憂う学識者 当時のデンマークは 当時のデンマークは 黒船来航など西欧列強の圧力 黒船来航など西欧列強の圧力 時代背景 英独の動向に左右される弱者 英独の動向に左右される弱者 徳川幕府の幕藩体制 徳川幕府の幕藩体制 ヨーロッパ全土の市民革命 ヨーロッパ全土の市民革命 農民の一揆 農民の一揆 詰め込み勉強、権威主義的なラテン語学校、 詰め込み勉強、権威主義的なラテン語学校、 既存の教育批判 聖書中心儀礼主義の既存キリスト教への批判 聖書中心儀礼主義の既存キリスト教への批判 孟子などを読むのではなく・・・ 孟子などを読むのではなく・・・ 『初めに人間があり、そしてキリスト者である』 『初めに人間があり、そしてキリスト者である』 試験、単位、資格なし、寮での共同生活 試験、単位、資格なし、寮での共同生活 朗読でなく 朗読でなく 教育方法 書物より生きた言葉による対話 書物より生きた言葉による対話 時事問題を塾内みんなで論議 時事問題を塾内みんなで論議 討論 実習実践を通して自己発見 討論 実習実践を通して自己発見 民衆に生きる喜び、解放と自由を教えた 民衆に生きる喜び、解放と自由を教えた 相違 「狂」自らの死を持って日本を目覚めさせる 「狂」自らの死を持って日本を目覚めさせる 継ぐ人 クリステン・コルなどが更なる普及 クリステン・コルなどが更なる普及 相違 優秀な人材は幕末動乱で全員死亡 優秀な人材は幕末動乱で全員死亡 デンマークで150年前より現代でも注目される 相違 デンマークで150年前より現代でも注目される 長州、日本全土が狂へ 長州、日本全土が狂へ 結果 ©From Denmark フォルケホイスコーレ フォルケホイスコーレ22 明治政府・・・ 明治政府・・・ 2010/1/29
  • 23. 参考図書 • 「世に棲む日日」 司馬遼太郎 • 「雄気堂々」 城山三郎 • 「生のための学校―デンマークで生まれたフリースクール「フォルケホイスコーレ」の世界」 清水満 • ラーンネットグローバルスクール 大人のためのモンテッソーリ講座 ナビゲーション講座 • 「第3の教育」 炭谷俊樹 • 「福祉の国からのメッセージデンマーク人の生き方老い方」小島ブンゴート孝子著など • 「平らな国デンマーク/子育ての現場から」高田ケラー有子など • 「お母さんのモンテッソーリ」 野村緑 • 「モンテッソーリアンと生きる」 松本静子 • 「幼児期には2度チャンスがある~復活する子供たち~」 相良敦子 ©From Denmark 23 2010/1/29
  • 24. デンマークの社会と教育 家庭・学校・社会の3つの教育すべてに一貫したウェイが浸透し、機能していることが デンマークの人育ての最大成功要因。 一方日本では・・・ 家庭教育 学校教育 社会教育 日本でただデンマークの教育メソッドやシステムを導入しても、 ©From Denmark 家庭や社会との一貫性がなくうまくいかないことが散見される。 24 2010/1/29
  • 25. デンマークの社会と教育 与えられない福祉について~自律と自立~ < 「デンマークの高齢者が世界一幸せなわけ」 つまり自治がなりたっている。 澤渡夏代ブラント著より> 完全に自分たちで運営しているということだ。 「福祉の豊かな国」として「デンマーク人は福祉 日本ではどうだろう サービ スの恩恵に依存した生活をしている」とい ほとんどのこのような団体は う印象を与えがちですが、実は「できるかぎり自分 若者や年金受給者外の人々がボランティアとして の生活は自分で」と人に依存することを好まず・・・ 働き 「自分らしい 生活」を送っています。 受給者そのサ-ビスを受け取るというのが、ほと んではないだろうか。 デンマ-クでは個人が自立し <高齢者のアクティビティセンタ-訪問> 自立した個人が自分たちの社会を 自分たちのために作り、運営していると感じる。 ところで一番興味深い点は スタッフはいないということ。 だからそもそも寝たきりにもならない。 500人ものメンバ-がいて、これほどまでの大き な施設で、である。 ©From Denmark 25 2010/1/29
  • 26. デンマークの社会と教育 デンマークの社会教育 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』 第77回「レジャーリゾートLalandiaと自己 責任」 ■ 高田ケラー有子 :造形作家 デンマーク北シェーランド在住 (プールにて)係員の指示など全く無くても、利用できるというのは、近隣諸国から来てい る人たちも含めて、自己責任の国であることを実感する場面でもあります。 基本的に子供には親が目を光らせる、というのが当たり前で、何か起こってもそれを施設 の責任にするようなことも少ないのだと思います。 ©From Denmark 26 2010/1/29
  • 28. デンマークの社会と教育 モノがない社会 <ブログ「From Denmark」脅迫的広告より> 買っても買っても 物質的に満たされていない心理状況に追い込 常々日本の広告は脅迫的と思っている。 まれている。 ほんとうに日本の雑誌やCMなんかみていると 膨大な広告を目にすることで ほとんどそうしないといけないように消費者を思 どれだけ満たされてない気持ちなっているか わせるようにできており ゆったりとした満足した精神状態になっていない 消費をしなければならないと脅しているように思 か う。 デンマークに来てそれを見ない生活になり初め てわかる。 また、週刊誌の電車の吊り広告なんて あってもビールか映画の広告ぐらい。 金欲や性欲を本当に暴力的に駆り立てるような 内容ばかり この過度の刺激による社会のストレスってすご いと思う。 ©From Denmark 28 2010/1/29
  • 29. デンマークの社会と教育 モノがない社会~コペンハーゲンとブダペストを比較して~ <ブログ「From Denmark」より> 一番驚いた点だけれども、この物価やGDPにもか 両国とも観光収入が33億ドルあり(観光白書より)、全 かわらず く同規模の収入を得ている。 デンマークの方が広告だけでなく圧倒的にモノが しかし、ここまで似通っているこの二つの観光都市だ 少ないということ。 が注目すべき相違点は つまり、モノにあふれてない。大量消費社会でな デンマーク ハンガリー いということ。 ●電飾 ほぼない。 |派手 余計なものや無駄がない。 ●広告 ほぼない。 |日本ほど出ないがかなり多 あれだけのGDPがありながら。 い。 約1/5のハンガリーの方がよっぽどモノにあふれ ている。 また、国に関して言うと デンマーク ハンガリー ●GDP/1人 39,588ドル |8,379ドル ! デンマークってつくづく当たり前のものが当たり前 約4.8倍違う! 2003年資料:国際貿易研究所 にあり、 ●物価 東京以上に高い|東京の半額以下 無駄がない余計なものがない。 つまり経済発展が格段に進んでいるにも関わらず、 広告がほとんどない ©From Denmark 29 2010/1/29
  • 30. デンマークの社会と教育 日本でも商品数削減という兆候?? <ワールドビジネスサテライト2009年6月?日> • 「資生堂、伊藤園、イオン商品絞る。商品数40%削減、売上より収益、消費者もイイモノを買え る」 <残業代もなければ生産性も低い~日本人の「労働」に未来はあるか “コスト削減の即効性が高い”残業削減について考える>2009年6月24日日経ビジネス • 1980年代は、ヒット商品のライフサイクルは、全体の80%が3年以上で、1年未満は10%にも満 たなかった。ところが、2000年代になると、1年未満が20%に増え、3年以上ヒットし続ける商品 は二十数%にまで減っている。(『中小企業白書(2005年版)』中小企業庁) • 新商品の開発・販売には、商品企画、研究開発、製造、販売まで広い部門のたくさんの人が 関わる。それだけ時間と費用をかけても、市場における競争圧力が増しているため、商品の寿 命が短くなっているのだ。利益なき繁忙は、携帯電話機から清涼飲料水まで広い業界を苦しめ ている。 • グローバル企業は、大量生産大量販売の薄利多売の事業で、市場の厳しい競争に常にさら される中で、利益を上げ続けることが運命づけられている。利益追求の行き着く先は、正社員 の削減、商品の短サイクル化、過剰品質・過剰サービスであり、これらの要因が正社員の長時 間労働につながるわけだ。 ©From Denmark 30 2010/1/29
  • 31. デンマークの社会と教育 デンマークの産業は、食品とニッチな分野での収益性の高い知的産業が多い <エネルギー> • 風力発電(世界シェア約50%,2002)、バイオマス <精密機器> • 補聴器(世界シェア約40% Oticon社2003年European company of the year受賞) <食品> • 甘味料(Danisco社世界シェアトップ、売上高約2700億円) • ビール、豚肉 <製薬> • メディコンバレー(次ページ参照) <その他> • 清掃(ISS社) • 海運(MAERSK社) • ロイヤルコペンハーゲン、ジョージジェンセン 出典:BBT総研作成北欧レポート ©From Denmark 31 2010/1/29
  • 32. デンマークの社会と教育 メディコンバレー <メディコンバレー> デンマークの大コペンハーゲン地域とスウェーデン南部のスコーネ地方からなる地域 で、質の高い研究で国際競争力のあるバイオ技術集積地のひとつである。 各分野でリーダー的存在である研究集約的な医薬品会社、Novo Nordisk, AstraZeneca, LEO PharmaとH.Lundbeckの存在が、この地域の応用研究を先導し、 産学間の生物医学研究環境の発達を促進している。 デンマークの大学と、小規模企業の共同研究の質は高く、イノベーションの観点から 国際競争力があり、イノベーションは、今後もデンマークのバイオ産業の成功の鍵と なると予想されている。 欧州委員会企業総局によるヨーロッパ諸国のイノベーション基準の比較によると、デ ンマークはバイオ技術のイノベーションでは、ヨーロッパではスイスに次いで 2 位であ る。 出典:ジェトロ ユーロトレンド2006 ©From Denmark 32 2010/1/29
  • 34. デンマークの社会と教育 カネを使わない社会 • 学校は大学まで無料(大学生にはむしろ補助金) • 医療すべて無料 • 家電は、新商品(マイナーチェンジはほぼない感じ)まあ必要に応じて買う程度 • テレビ見ないから古いまま • 車は、新車となれば400万ほどはするとのこと。ちなみにベンツのミドルクラスでは 1000万日本車高すぎて買えない。だからあまり車乗ってない。 コペンハーゲンでは自転車が基本という印象で、交通渋滞を見たことがない。 • 貯金は、年金があるし、医療が無料だからあまりしないとのこと。 • エンタメは、海、森、公園、スポーツ、充実した公共施設、おしゃべり、ホームパーティ ©From Denmark 34 2010/1/29
  • 35. デンマークから何を学び、どのように応用していくことができるのか? 3.日本と日本企業が学ぶべきポイント ・「工業社会」から「知識社会」へ ・人材マネジメントの観点から考える ・共有と深化 ©From Denmark
  • 36. 日本と日本企業が学ぶべきポイント 「工業社会」から「知識社会」へ <教育改革で「知識社会」へ転換> 知識社会のステイタス 2009年4月3日日経ビジネスオンライン ところで、社会が「知識社会」へと転換した時、私た ちの価値観はどのように変化するのだろうか? 「工業社会」から「知識社会」へ 「重工業は国を代表するイメージが強いですが、企 これについて、スウェーデンの社会システムに詳しい 業が大きくなれば工場を低賃金で勝る海外に移さざ 神野直彦教授(東京大学経済学部・大学院経済研究 るを得ません」(チャイブ教授)。転出した国で雇用、 科教授)は、「従来の工業社会が、家や車など、もの 製造し納税するのだから一昔前とは“国産”の意味も を手に入れたいという“所有欲求”に突き動かされて “国益”の本質も変わってきている。グローバル化の中 成り立っているのに対して、知識社会では、自らの存 で、コンパクトに最大の外貨の獲得できるのは知的・ 在価値を見出したい、人とつながり、社会に貢献した 文化的産業、というわけだ。 い、という“存在欲求”がモチベーションになります」と 言う。 「これからの時代を担う知的産業の基礎となるのが、 人が生涯を通して必要に応じて学び続けることを推 「スウェーデンの地方自治のあり方は、ヨーロッパの 進する生涯学習社会なのです」(同)。 自治憲章(1985年)想起の参考にされているほど優 れています。 大量生産・大量消費、工場設備や低賃金労働に よって支えられてきた「工業社会」から、資源の持続 知識社会の根本になるのはいわゆる学校教育だけ 可能性を基本とした生産・消費、知的労働よって支え でなく、社会に出た後でも必要に応じて学び足したり、 る「知識社会」へ向けて、スウェーデン、北欧、そして 職業的に新たな技術や知識を得るための成人教育 EUは大きく舵を取っている。 で す。その礎になるのが、生涯にわたって教育や医 療や福祉といった公的サービスを行う地方自治と財 政のシステムなのです」(神野教授)。 ©From Denmark 36 2010/1/29
  • 37. 日本と日本企業が学ぶべきポイント 「大量消費が豊かな経済社会」というのは虚妄?幻想!? ①モノがない 種類がない →R&D費がいらない 生産性が高い→無駄な労働をせず、必要なことをする→忙しくなく稼げる ②カネを使わない 貯金しない、保険ない、不安がない(心理経済学?) ③ヒト 「工業」社会の生産者から「知識」社会の知識創造の主体者に →ゆとりが育むデンマークの国民性 →創造的活動の源泉は内発的動機(Self Determination Theory, E.L.Deci) →内発的動機の創出には、自律につながる「選択の機会」が増えることが重要 ©From Denmark 37 2010/1/29
  • 38. 日本と日本企業が学ぶべきポイント 人材マネジメント論の観点から考察 <はじめに> 新自由主義の浸透、ボーダレスワールドの加速、その流れに「ひと」も「社会」も多大な 影響を受け、それによる歪が出てきているのも否めない。その激動の世界の中で、デン マークは世界幸福度No1であり、1人のあたりのGDPも高く、社会的にも経済的にも豊かと いうことがいえるであろう。 その成功の要因であるその教育。そのデンマーク教育についてHRM理論の観点から科 学的に洞察していきたい。人の4つの能力やコンピテンシーレベルといった理論からデン マーク教育を考察することで、その独自のエクセレンスは何なのか?そこから学ぶべき最 も重要ポイントは何なのかを考えていきたい。 ©From Denmark 38 2010/1/29
  • 39. 日本と日本企業が学ぶべきポイント 下記の4つの能力のうち、デンマークの教育現場で重要視されているのはどれだろうか? 日本人に比べ、デンマーク人が優れていると思われるのはどの能力であろうか? <人の4つの能力(「ヒューマンリソースマネジメント」高橋俊介著)> スキル: 多くは何歳からでも習得可能、テストで把握、陳腐化のスピードも速い、知識や専門性は今何 が持っているか、何が出来るか以上に、短期間に新しいものを学べるかが重要、ある程度は必要だが、 What構築能力がないと・・・ 頭のよさ: いわゆる優秀さと表現されることが多い、最も変化しにくい能力と考えられており人物評価の 固定化につながっている、思考力試験のようなものである程度把握可能、最低限必要なレベルがあるが頭 がよければ成果が出るというものではない、いくら頭がよくてもWhat構築能力がないと 行動特性思考特性: What構築能力はその典型、リーダーシップと呼ばれる能力もこの分野に属する ものが多い、若いうちは環境により変化しやすいが年齢とともに固定化しやすい、勉強や練習というよりア ウトプット、実践を通じて強化される、安定した高い成果に最も相関が高い、成果でなくプロセスで把握、コ ンピタンシーという概念の中核能力 動機: その人の内側からドライブする要因、そのときの外部条件により、やる気は都度変化するが、内的 ドライブは安定的、少年期を通じて形成され、以後そのパターンは大きくは変わりにくいとされている、感謝 欲、影響欲、支配欲、理解共感欲、賞賛欲、社交欲、好印象欲、 ©From Denmark 39 2010/1/29
  • 40. 日本と日本企業が学ぶべきポイント コンピテンシーレベルで日本とデンマークの人材像を比較するとどうであろうか? <コンピテンシーレベル(「会社を変える社員はどこにいる?」川上真史著)> レベル1:言われたことしかしない。 レベル2:与えられた役割は遂行できるレベル レベル3:複数のやり方の中から、最良の判断を行い実行できる。 既存の変革は実行できるレベル。 レベル4:独自の工夫を加えた行動を取り、そのなかで状況を変えていく。 新しい対象領域を創造できるレベル レベル5:今ある状況とは別の新しい状況を独自につくってしまう。 新しいビジネスモデルを創造できるレベル ©From Denmark 40 2010/1/29
  • 41. さらなる探究へ • ヒトに関してはどうなのか? なぜ自立型人材が求められているのに育たないのか? • モノに関してはどうなのか? 流通の仕組みや市場運営はどうなっているのか? • カネに関してはどうなのか? マクロ経済や国家行政の見地からは? ©From Denmark 41 2010/1/29
  • 42. 日本と日本企業が学ぶべきポイント 日本と日本企業が学ぶべきポイント <共有&深化> 1. 隣の人と気になった点などを話し合いましょう。 2. 対話の相手を交換し、これまで話したことを共有してさらに話を進めてください。 3. 3回繰り返します。 4. 最後に全体でシェアリングをしたいと思います。 ©From Denmark 42 2010/1/29
  • 44. その他参考資料 デンマークの社会とは何であったか <ブログ「From Denmark」より> 自分で自分をコントロールする「自律」が 前回、デンマークの教育の成功の本質は 心の内側から湧き出るやる気「内発的モチベーション」につながり 一貫したウェイがあることとかいた。 それが「よりよい活動」をうみ、「幸福度」の増進につながる。 では、どのようなウェイなのか? その「自律」をどう育成されるのかということはあまり知られていない。 一つ間違いなくいえることは これだけ注目されている「自律」であるが、 デンマークが「自律」を促進している社会だということだろう。 「自律はどうすれば育つか?」といわれて その本質を答えられる人はどれだけいるだろうか。 つまり、 デンマークでは、学校・社会・家庭の3つが一貫して ちなみに少なくとも「規律・管理統制・命令」で「自律」が育つわけは 「自律」を促進する環境になっているということ。 なく、 それらは対極にあるものである。 その「自律」の重要性は、 しかし「自律してほしい」といいながら、管理・命令ばかりしている人 OECDのDeSeCo Projectのキーコンピテンシーにも上げられている は、 通り 誰の周りにもいるのではないだろうか。 ビジネス界においてもその重要性は広く認識されており 目指すべき人材像に「自律」を掲げている会社も少なくない。 「自律」を育てるデンマーク社会。 どうやってデンマーク社会の幸福度世界NO1になったのか、 エドワード・L・デシなどによると その最も本質的で重要なことを下記の本が説明してくれている。 「自律」は「内発的動機」に必要なものであり、 そして、その「内発的動機」は「創造」や「問題解決」をもたらし、 その結果「幸福感」にいたることがわかっている。 この「人を伸ばす力 内発と自律のすすめ」は 何度読んでも新しい発見がある。 「創造」や「幸福感(従業員満足)」などと なぜこの本があらゆる方面で活用されないのか理解できないほど、 多くの組織で課題となっているものの根幹にこの「自律」がある。 「ヒト」や「学び」の考え方の正真正銘の本質がかかれている。 はっきりおすすめと自信を持っていえる名著 ©From Denmark 44 2010/1/29
  • 45. ヨーロッパが推進している「これからの教育」 ヨーロッパの諸国が旧来の学力観から新しい教育へ 教科の知識ではなく、これから何ができるかという能力(コンピテンシー)へ重点を移行 Desecoのとらえたキーコンピテンシーの枠組み 社 会 う の ・人権 異質集団の中で ま ビ ・持続可能性 相互交流する く ジ ・平等 Interact in い ョ ・生産性 heterogeneous く ン 生 groups 活 キーコンピテンシーの 省察 よ 理論的要素 く Reflectiveness 機 生 能 活 ・テクノロジー 相互交流的に す 自律的に の ・多様性 道具を使用する る 行動する 要 ・流動性 Use tools 社 請 Act autonomously 会 ・責任 interactively ・グローバル化 ©From Denmark 45 2010/1/29
  • 46. ヨーロッパが推進している「これからの教育」 Reflectiveness:省察 キーコンピテンシーをつなぎとめる決定的な能力 • 自己の思考や行動を吟味するというメタ認知能力の意味合い:自身を客体とするよう な思考過程の主体となること • 思考について思考すること • 創造的能力や批判的姿勢をとること • 二者択一を超えて、即断ではなく粘り強く考える、熟考する • 違いや対立を扱う能力 Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003 ©From Denmark 46 2010/1/29
  • 47. ヨーロッパが推進している「これからの教育」 PISA2006問題例(科学リテラシー) • 太郎さんが、地球の平均気温と二酸化 炭素排出量との間にどのような関係が あるのか興味をもち、図書館で次のよう な二つのグラフを見つけました。 •太郎さんは、この二つのグラフから、地球の平均 気温が上昇したのは二酸化炭素排出量が増加し たためであるという結論を出しました。 ©From Denmark 47 Source:文部科学省サイト 2010/1/29
  • 48. ヨーロッパが推進している「これからの教育」 PISA2006問題例(科学リテラシー) 温室効果に関する問1 太郎さんの結論は、グラフのどのようなことを根拠にしていますか。 温室効果に関する問2 花子さんという別の生徒は、太郎さんの結論に反対しています。花子さんは、二つのグラ フを比べて、グラフの一部に太郎さんの結論に反する部分があると言っています。 グラフの中で太郎さんの結論に反する部分を一つ示し、それについて説明してください。 温室効果に関する問3 太郎さんは、地球の平均気温が上昇したのは二酸化炭素排出量が増加したためである という結論を主張しています。しかし花子さんは、太郎さんの言うような結論を出すの はまだ早すぎると考えています。花子さんは、「この結論を受け入れる前に、温室効 果に影響を及ぼす可能性のある他の要因が一定であることを確かめなければならな い」と言っています。 花子さんが言おうとした要因を一つあげてください。 ©From Denmark 48 Source:文部科学省サイト 2010/1/29
  • 49. 社会に出て生きていく基本的な必要条件 「リテラシー」 • 情報を入手し、管理し、統合し、創造し、判断する能力 分析し、比較し、対照し、価値を測る能力 • 知識を受け入れ、知識を生み出す 知識と情報とを創造的に運用する能力 創造的 に考え、新しい知識を生み出し、仮定し、発見する方法 まだ馴染みのない新しい状 況に対し、知識と経験を適応する能力 • 変化に適用する能力 • 傾向を認識し、共通点を確立し、経験した状況と将来であうかもしれない新しい状況 との関係を打ち立てる • 変化に対応し、現代生活の非常に重要である曖昧性・複雑性との折り合いをつける Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003 ©From Denmark 49 2010/1/29
  • 50. コンピテンシーの内的構造 コンピテンシーの内的構造 Knowledge 知識 Cognitive skills 認知技能 協 Practical skills 実践技能 同 Attitude 態度 要請に基づくコンピテンシー と Emotions 情緒 例)協同する能力 関 Values and ethics 価値と論理 連 Motivations 動機 す る Source:「競争やめたら学力世界一 フィンランド教育の成功」福田誠治 著 Key competencies for successful life and a Well-Functioning society.2003 ©From Denmark 50 2010/1/29
  • 51. その他参考資料 デンマークは日本の1/7以下の面積しかない小国 人口密度も日本の1/3以下 デンマークの国土 2001年,k㎡,人/k㎡ 国土面積 人口密度 9,629,091 アメリ 2,958 カ フラン 10,733 ス スウェーデ 1,978 ン ドイツ 23,066 551,500 449,964 日本 38,826 357,022 327,844 242,900 イギリ 24,603 ス 43,094 デンマーク 12,438 アメリ フラン スウェーデ ドイツ 日本 イギリ デンマーク カ ス ン ス 出典:総務省統計局 ©From Denmark 51 2010/1/29
  • 52. その他参考資料 デンマークは536万人の小国。(北海道566万人、兵庫県559万人と同規模) 増加もほぼ横ばい。 デンマークの人口 1950-2001,万人,% CAGR 30000 アメリ アメリ 1.16 カ カ 25000 日本 0.83 20000 イギリ 0.36 ス 15000 フラン 0.68 ス 日本 10000 ドイツ 0.37 ドイツ イギリ スウェーデ 0.47 5000ス フラン ン ス スウェーデ デンマーク 0.45 0 ン デンマーク 1950 1975 1995 20002001 出典:総務省統計局 ©From Denmark 52 2010/1/29
  • 53. その他参考資料 デンマークのGDPは日本の1/20と規模は小さい、また、日本はマイナス成長の中プ ラス成長 デンマークのGDP 1980-2003,100万ドル CAGR 1995- アメリ カ 2003,% 10000000 世界 2.62 アメリ 5.09 8000000 カ 日本 -2.56 6000000 ドイツ -0.37 日本 4000000 イギリ 5.88 ス ドイツ フラン 1.5 2000000 ス フラン ス イギリ ス デンマーク 2.06 0 デンマーク 1980 1985 1990 1995 2000 2002 2003 出典:国際貿易投資研究所 ©From Denmark 53 2010/1/29
  • 54. その他参考資料 しかしながら一人当たりのGDPをみるとデンマークは世界4位 日本の1.2倍もある。 デンマークの一人当たりのGDP 1980-2003,ドル CAGR 60000 1995- 1ルクセンブルク 2003,% 1ルクセンブルク 3.51 50000 2ノルウェイ 4.63 2ノルウェイ 4デンマーク 1.74 4デンマーク 6アメリ 3.97 40000 カ 6アメリ 8スウェーデン 2.38 カ 8スウェーデン 9日本 13フィンランド 9日本 -2.77 30000 14イギリス 15フランス 17ドイツ 13フィンランド 2.55 14イギリス 5.53 20000 15フランス 1.07 17ドイツ -0.49 10000 1980 1985 1990 1995 2000 2002 2003 出典:国際貿易投資研究所 ©From Denmark 54 2010/1/29
  • 55. その他参考資料 労働時間は日本は多い、比べてデンマークは少ない。 各国の労働時間 1990-2007,hours 2300 2200 2100 2000 1900 1800 日本 アメリ カ 1700 イギリス 1600 デンマーク スウェーデン フランス 1500 ドイツ 1970 1971 1972 1973 1974 1975 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 出典:OECD Factbook 2009: Economic, Environmental and Social Statistics 2009年06月25日 ©From Denmark 55 2010/1/29
  • 56. 追調査事項 • <追調査事項> ●自殺率は、デンマークより日本の方がかなり高いようです。 http://www.who.int/mental_health/prevention/suicide_rates/en/index.html ●年金額について下記をご参照ください。 http://www.jmm.co.jp/dynamic/report/report2_197.html ©From Denmark 56 2010/1/29